マンションのためのアイランドキッチン(収納編)

一般的にはキッチンは殆ど既製品。

でも、限られたスペースであるマンションには通常のシステムキッチンはやや大ぶりですし、ミニキッチンでは小さ過ぎます。

シンケンではこれまでもオリジナルキッチンを主に提案していますが、機能性とデザインを追及するならこれです。

この部屋に暮らす人には明るく、いちばんいい場所に立って洗いものとかしてほしいなと思い、既製品にはないミニマムサイズのアイランドキッチンをつくりました。

 


↑コンロ台横のワゴンはキャスター付きで動かせます
 


↑冷蔵庫のサイズやポジション、家電の配置によって自由に
 

 

 

  • ●正面から見たところ

  • ●横から見たところ

 

 

 


↑収納の内部の棚受けはねじ込み式になっています
 


↑掃き出し窓の上部に小さな棚を設けました(いろいろ小物を置くとかわいいです!)
 

風を取り込む

鉄筋コンクリート構造のマンションは、古い物件でも比較的気密性は保たれやすい造りです。
また、マンションはほとんどの場合隣接住戸が接していて窓が少なく、外壁に面している壁が少ないので同年代の一戸建て木造住宅より室内温度を快適に保ちやすいとも言えます。

最近のマンションでは窓を閉めた状態でもスムーズに換気ができるように吸気口が複数設けられていますが、ヴィンテージ物件では写真のような小窓でその役割を果たしていました。ガラス交換の際に全面 真空ガラス にもできたのですが、留守中でも開けておきやすく灰も入りにくいと思ったので、あえて残すことにしました。

この部屋では、バルコニー側にだけ開けられる窓があって、廊下側で開けられるところは玄関ドアだけでした。

 


↑朝、障子を閉じた状態
 


↑障子を開けたところ(両側に引き込むようになっています)
 


↑全部開けたところ(ヴィンテージマンションに見られる“小窓”)
 


↑半分開けたところ(片方だけ引き込めるようになっています)
 


↑全部閉じたところ(中ほどのT字型の白いパーツでガラスを押さえて外から開けられないつくりになっています)
 


↑おもいきって玄関ドアにロール式網戸を取り付けてみました(風通しばっちり!涼しくなりました!)
 


↑網戸を半分開けたところ(網はやっぱり黒です)
 


↑網戸を全部開けたところ(ドアは足元にストッパーを挟んで止めてあります)
 


↑ドアを閉めた状態(郵便受けの下の四角いところは牛乳瓶受け!まさにヴィンテージです)
 


↑網戸を使わないシーズンはロール網部分をはずして別のところにしまっておけます
 

マンションの廊下側には洗面・脱衣室やトイレが計画させていることも多いのですが、換気扇に頼るだけでは換気量が少なくどうしてもカビが発生しがちになります。窓を開けての自然換気は換気量がとても大きいので、換気したいときにガバッと空気の入れ替えができるようにしておくことで部屋の空気をスッキリ保ちやすくなるのです。
 

布の表情(窓辺編)

窓辺の光は、カーテンやシェードの素材やテクスチャーで大きく表情が変わります。

単調になりがちなマンションの窓辺に色々な素材の布地を用いることで、やわらかい光のある居心地のいい場所にすることができます。

一戸建てに比べて窓の少ないことの多いマンションだからこそ、窓辺の光を楽しみましょう。
 


↑朝、カーテンを閉じた表情(厚手と薄手のリネンの組み合せです)
 


↑朝、カーテンを開けた表情(出窓の奥はうすい素材で降ろしたままです)
 


↑このうすいのは、アンティーク生地でつくってもらったポジャギ※です。
 


↑夜、カーテンを閉じた表情(布の向こうにもう一部屋あるような雰囲気)
 


↑夜、カーテンを開けた表情(夜は夜で出窓がかわいいです)
 

※ポジャギって・・・

「ポジャギ」とは、韓国語でものを包んだり覆ったりする布のことで、 日本の風呂敷や袱紗(ふくさ)のようなものです。
その種類は多く、はぎれをつなぎ合わせて作るパッチワーク風のもの、刺繍入りのもの、綿をはさんで刺子風に作るものなど実に様々です。今回、鹿児島の作家さんにつくってもらったパッチワーク風のものは、素材の組み合せや使うときの向きひとつでも表情が豊かに変化するので大好きです!

 

 

真空ガラス

マンションの窓枠は共用部分であり、通常個人の工事では交換することができません。

ガラスについては交換することは可能ですが、管理組合ごとに条件の確認が必要です。

今回は窓枠を変えずに断熱性能をアップするため、“真空ガラス”と呼ばれる薄型ペアガラスに交換しました。
 


↑一定間隔に整然と並ぶこの小さな点が0.2mmの真空層を保持するためのスペーサー(右上の丸いのは空気を抜いた穴の保護キャップ)
 


↑保護キャップ(室外側からみたところ)
 


↑室外側が5mmLo-eガラス+0.2mm真空層+室内側は3mmフロート板ガラス
 


↑こちらは網入りのフロストタイプ
 

真空ガラスの特徴は・・・

◆1枚ガラスの約4倍の断熱性能

◆1枚ガラスに比べて約40%、一般的なペアガラスと比べても約20%のエネルギー削減

◆結露の発生をおさえてクリアな視界確保と室内空気を衛生的に

◆ペアガラスなのに薄型なので今のサッシ枠に収まる

◆2枚のガラスの共鳴がなく遮音効果に優れている

 

・・・すぐれものです。

 

 

夜の木陰

ひとつでいいから、大きな枝ぶりの観葉植物が欲しい!

インスタグラムやインテリア雑誌を眺めながら、こんなふうに思っている人は多いのではないでしょうか?

でも、あまり大きなのはバルコニーに出してたっぷり水やりしたり、風にあててあげたりしづらいので悩ましいところですよね。

そこで、この部屋に夜な夜な通っていて発見した『なんちゃって大きな観葉植物』の話です。
 


↑夜になって照明をつけると天井に大きな葉陰ができます
 


↑たねとしかけの照明器具はこんなのです(位置・長さや角度が自在になります)
 


↑実は電球が上下別々にふたつ光っているのです(あのコルビジェのデザインです!)
 


↑この場所で読書をしていると“大きな木の下感”があって、不思議に落ち着くのです・・・
 

 

ロフト付きクローゼット

マンションの限られたスペースで広々暮らしながら、十分な収納量を確保したい!
これはみんなの一致する要望です。
この部屋では、玄関土間をいきなり広ーいクローゼットにして、その上には押入れ代わりのロフトスペースを設けました。また、ロールスクリーンとガラス引違い戸で視線と風通しをコントロールできるようになっています。

 


↑ロールスクリーンを下まで下ろしたところ(来客モード)
 


↑ロフト部分の照明オン(大きな行燈のようです)

 

↑玄関の照明オン(通風のためのスリットから光が漏れます)

 

↑ロフト部分のみロールスクリーンを下ろしたところ(普段モード)

 

↑ロールスクリーンを全部上げたところ(荷物の上げ下ろしには踏み台が必要です)

 

↑ロフトの上はこんな感じ(実はここで眠ることもできます)

 

↑ガラス引違い戸が閉まっている状態(来客モード)

 

↑玄関ドア側が開いている状態(靴を履いてから帽子が取れます!)

 

↑窓側が開いている状態(すごく風通しがよくなります!)
空気がよどむと、どうしてもカビの発生などが助長されてしまいます。

この部屋の場合、快適な放射冷暖房で調整された空気を部屋の隅々まで行きわたらせるための工夫でもあります。

 

理想のカスタムキッチン(収納編)

限られたスペースで如何に収納量と広さを両立させるか。

マンションに限らず、住まいでの大きな課題です。

“3階、男子の部屋”では、大小もロフトスペースをできるだけたくさん取ることにしました。
 


↑L型レイアウトの木のカウンター
 


↑必要なところだけ隠す収納
 


↑正面から見たところ
 


↑ダイニングテーブルの定位置からふり返ってすぐ物が取れます
 


↑反対側もしかり・・・
 


↑上部は大小の棚がぐるっとまわっていて、色々置けます

 

ここでも、自由になる収納。

すべてをつくり込んだりは、決してしません。

使う人が、使いながら、使いやすくしていく。

台所(キッチン)とは、そういう場所である方がよさそうです。

 

室内露天風呂

マンションのお風呂で窓があるケースは稀ですよね。

仮に窓があったとしても換気用なので、小さく暗くその先には何もいいものは見えないことがほとんどです。

お風呂に入るとき、以外とぼんやりと景色や植物を眺められると幸せになります。
 


↑ドーン。 思いきって目いっぱい透明ガラスの窓
 


↑シェードを下したところ
 


↑上だけ開けたり・・・
 


↑下だけ開けたりもできます(あんまりしないか・・・)
 


↑ベッドルームからの感じ(その先の脱衣スペースまで見えてます!)
 


↑同じく、シェードを閉めた様子

 

この大胆なお風呂から、この部屋は『3階、男子の部屋』と名付けられました。

しかし、実は女性にもすごく人気なのです。

 

桜並木を望むキッチン

甲突川沿いには桜がたくさん植えられていて、毎年春になると多くの人でにぎわいます。

この部屋からは、ほどよい角度と距離感で対岸の桜並木を眺めることができます。

どうしても毎日立つキッチンからこの景色を見たい! そう思って考えたのが”3階、男子の部屋”のプランです。

そうです。 すべてはキッチンの立ち位置から始まったのです。
 


↑どうしてもここに立って洗い物をしてもらいたかったのです
 


↑キッチンに立つとこんな景色です
 


↑障子を閉めた感じも悪くないです
 


↑こういう位置関係(AFTER)です
 


↑これではテンション上がるはずがありません(BEFORE)
 


↑こんなのキッチン離れも避けられません(BEFORE)

 

この場所に立つのが楽しみになる。

さあ、何つくろうか。

日常の立ち位置ひとつでも、少しだけ人生豊かになります。

 

光を取り込む

マンションの脱衣室やトイレは多くの場合、窓がなく昼間でも暗がりです。

窓が少ないのは、構造上やむを得ない面もある訳ですが、ある程度はプランニングで解消できます。
 


↑脱衣スペースの窓からは夕方西日が差してきます
 


↑引戸を閉めていてもガラス越しに光がまわるようにしてあります
 


↑一日中照明が必要な感じだった玄関もこの時間帯は明るくなりました
 


↑光は廊下を越えてトイレの中まで広がっていきます
 


↑トイレの中も暗がりにはなりません

 

もちろん、夜になって照明をつけても明かりはガラス越しに広がっていくので、この部屋ではあちこち照明をつける必要がありません。

また、シンケンスタイルのリノベーションではドアは極力避けて、引戸を提案しています。

引戸なら開けておいてもかさばらず、光や風をいきわたらせることができるからです。